The Cat Angelイメージストーリー

Category : 物語-Story-
本日から開催される「夏の厳選30作家・新作展」に出展した「The Cat Angel」の
イメージストーリーを、Manami Sasaki氏から提供して頂きました。

皮肉屋の猫天使と”僕”の最後の仕事を描いた大作です。
ストーリーを読んでから作品を見て頂ければ、より想像が広がって楽しめるかと思います。
よろしければご覧下さい。

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The Cat Angelイメージストーリー「天使」

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神様が僕にくださった最後のお供は、猫のような黄金の目をした、鳥のように大きな翼を持つ、
何と言えばいいのかは分からないがとにかく愛らしい顔をした動物だった。

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「天使というのは人の形をしているとばかり思っていたよ。」
そう言った僕に彼は湿った鼻をフンと鳴らして答えた。

「今までお前が出会ってきたのが、たまたま人の形をしていただけだ。
それが当たり前だと思ってしまうのは、君らが自分たちと同じような形のものにしか敬愛の意を示さないからだろう。」

敬愛の意と言われても、そんな可愛い顔をしていれば若い女の子だったら抱き上げて頬ずりくらいしているんじゃないか、と思いつつ「あぁ、なるほどね」と気の抜けた相づちを打ったら、小さな手で足をぱちんと叩かれた。

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僕は彼と二人で最後の仕事を始めた。生きている時と同じく、ヘマばかりやる僕を
彼はストレートすぎる皮肉と容赦ない罵声で包み込んだ。

しかしブツブツいいながらも面倒見がいいやつで、仕事の中でも一番困難であった
”コルベラット駅のホームのベンチに毎日一輪の花を置く花売りの少女の気持ちを向かいのホームを通過する列車の車掌に気付かせる”
ことに成功したときには、彼がいつもぶら下げているポシェットから角砂糖を取り出して二人で祝杯をあげた。
(角砂糖は彼の好物であるらしく、「いい仕事をした後にはこれをちびちび舐めるのさ」と教えてくれた)

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そうしてひとつひとつ仕事を片付けていった僕と彼にはお別れのときがやってきた。

最後の仕事の最後。
一体これからどうなるのだろうとただ向かい合って彼の言葉を待つ僕を、
彼は少し離れたところからじっと見据えていた。


「誓うんだ」
「誓う?」
「そうだ、神様に」
「あぁ、教会でやるようなやつかい?僕のところではそういう習慣はなくてね、
結婚式の時にくらいしかそんなことしないからやり方がよく分からないんだよ」

それで充分だ、と彼は言った。

「結婚するとき、君たちは生涯の伴侶にその愛を誓う。けれど”愛するもの”に対する誓いはそれが初めてではない。
たとえ生涯誰とも結婚せずに過ごしたとしても君たちは神に誓っているはずなのだ。君は――」


「君自身に誓っているはずなのだ。」


そして彼は僕に言った。
その誓いの言葉はどこかで何度も聞いたことがある言葉に似ていた。

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「健やかなるときも 病めるときも
喜びのときも 悲しみのときも 
富めるときも 貧しいときも
君は君自身を愛し 君自身を敬い なぐさめ たすけ 
その命ある限り 真心を尽くすことを誓うか?」

健やかなるときも病めるときも僕は。

僕自身を愛し。

全てが丸く満ちたようなとても不思議な気持ちだった。


「誓います。」


その黄金の目を見つめて僕は答えた。

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そうか、ふんと一度鼻をならし彼は僕の足のすぐ側まで来た。
翼を使って飛び上がり、腕を目一杯に伸ばして僕のズボンのポケットに何かをぐいぐいと押し込んだ。

「さよならだな、ここからの道はまっすぐだ。
いくらヘッポコな君でも迷子になったりはしないだろう。どうせまた会う。
あっでもすぐじゃないぞ、君にとってはずっとずっと後だ。その時まで、またな」

彼は早口で、言い切る前にはくるりと後ろ振り向いて歩きだして行ってしまった。

それでもチラチラこっちを振り返り「何見てるんだよ」「早く行けって」とぶつぶつ言いながら僕を見ていた。

僕は今まで言いたくてもずっと我慢していた言葉を言った。


「やっぱり、かわいいな」


言った途端に自分で吹き出してしまい、ひとしきり笑った後に僕は歩き出した。

ポケットの中に手をいれると、指先にざらざらとした割れた角砂糖のかけらがあたった。

いい仕事のご褒美を口の中で溶かしながら、僕はこの道の先の青白く光る場所へとまっすぐ向かっていく。

再び生まれ、今度はちゃんと僕自身を愛する為に。



文/Manami Sasaki提供
造形/Mile Paxton
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プロフィール

Mile Paxton(マイル・パクストン)

Author:Mile Paxton(マイル・パクストン)
ドール用の狼襟巻きをはじめ、ぬいぐるみや着ぐるみなど色々な動物モチーフの作品を作っています。作品は全てフェイクファーです。
仕事のご依頼、出展のお誘い等ありましたら以下までメールかDM下さいませ。

Mail:paxton.s.ferret@gmail.com
twitter:Mile_Paxton

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